主催: 一般社団法人日本周産期・新生児医学会
会議名: 周産期学シンポジウム:胎児仮死および新生児仮死
回次: 6
開催地: 大阪府
開催日: 1988/01/23
p. 30-43
はじめに
胎児仮死は概念的には呼吸循環不全を主徴とする症候群であるが,その原因は種々多様である。しかし原因は何であれ,病態の根底には低酸素症が存在し,それによって引き起こされた児適応不全が仮死の臨床像を形成していくと考えられる。したがって,仮死の病態は個々の児に対するhypoxic stressの程度と児固有の生命維持機構としての生体防御反応の2面から構成され,また評価されるべきであろう。両者のバランスのうえに生体としての恒常性が保たれ,その破綻は適応不全を形成し,臨床的には重症仮死あるいは児死亡として表現されるが,防御反応の中心として児の交感神経・副腎髄質系の存在が重要である1)。
本稿では上記の観点に基づいて胎児仮死の病態を基礎的,臨床的に検討した。なお,本研究では胎齢の相違による影響を除外するため臨床的には正期産例について検討を行った。さらに仮死と密接に関連し,予後を極めて大きく左右する仮死後の中枢神経系障害についても脳糖質代謝の面から動物実験によリ若干の検討を加えた。