2020 年 36 巻 4 号 p. 293-297
坐骨支持免荷装具は,荷重制限を要する大腿骨骨折患者に用いることで早期から歩行練習を可能にするが,適応には比較的高い身体機能が必要である.本症例は大腿骨顆上骨折を受傷した男性であり,受傷側は幼少期のポリオウイルス感染によって下肢筋力低下,変形,脚長差を呈していた.受傷側下肢筋力は,大殿筋は正常,大腿四頭筋は完全麻痺,その他の筋は不全麻痺であった.術後に坐骨支持免荷装具とロフストランド杖を処方して早期から歩行練習を開始した結果,早期に実用的な歩行能力を獲得し早期職場復帰が可能となった.また,坐骨支持免荷装具を使用した状態での身体活動量は退院後1カ月で約70%,2カ月で約90%まで改善した.麻痺肢の大腿骨骨折であっても大殿筋の筋力が維持されている場合は坐骨支持免荷装具によって社会復帰を促進する可能性がある.