2023 年 39 巻 2 号 p. 125-130
両側大腿切断と右片麻痺,高次脳機能障害を重複した壮年男性の症例を経験し,症例の状態に応じた工夫をしたことで入浴以外の日常生活動作(ADL)が自立し,介助での義足歩行が可能になったため報告する.非麻痺側手で操作可能な股関節の可動域制限に対応できるチルト・リクライニング式電動車椅子を選択すること,麻痺側方向への移乗を後進移乗とすること,更衣用の台をポータブルトイレの後方に設置すること,などを工夫した.その結果,移動や移乗が獲得でき,生活範囲が拡大し排泄が自立した.両側大腿義足は四辺形ソケット,シリコンライナーとベルクロで懸垂し,固定膝,カーボン製足部を処方した.ADL練習と歩行練習を並行して進めることで本人の尊厳を高めつつ,家族への頻回な介助指導を行ったことは心身機能の改善やADL,歩行能力の向上に重要であったと考える.