抄録
片麻痺者の歩行用装具において, 立脚初期踵接地時の背屈筋遠心性収縮の補助は重要な機能である. 先行研究でこの機能をばねを用いた補助ユニットによって実現する装具を開発したが, 外観や製作の点で問題があった. そこで, 補助ユニットの小型化が可能な油圧ダンパーを使用して, ばねと同様な機能を満たす装具の開発を行った. 油圧ダンパーを使用した装具では, 踵接地時の衝撃力を油圧で吸収することができ, 衝撃吸収の強さは無段階の調節ねじで変更可能とした. 油圧を利用した装具の機械特性を計測して, 広い範囲で機能調節が可能なことを確認した. 片麻痺者の歩行分析の結果より, 油圧ダンパーと小型のつるまきばねを併用した装具で, ばねユニットと同等の歩行が実現できることがわかった. 歩行における油圧とばねの役割と今後の課題について検討した.