抄録
交互歩行装具 (Advanced Reciprocating Gait Orthosis: ARGO) を用いた脊髄完全損傷者の装具歩行について, 遊脚期の股関節屈曲動作を動力補助する装置を考案した. 動力補助の有無が装具歩行パフォーマンスにいかなる影響を及ぼすかを検討するために, 胸髄完全損傷者8名 (Th5~12) を対象として, 装具歩行中の動作力学的計測, 代謝計測を実施した. 動力補助の直接の対象である股関節屈曲動作には動力補助に伴う顕著な変化は認められなかったが, 体幹の筋群に運動麻痺が及ぶ胸髄高位損傷者では, 歩行中の定常状態酸素摂取量と歩行速度から算出したエネルギーコストが動力補助によって改善する傾向を示した. 本研究の結果は, 脊髄損傷者の装具歩行動作に動力補助を施すことによって過度の身体的負担を軽減できる可能性を示すと共に, 動力補助による影響が損傷高位によって異なる可能性を示すものであった.