女性心身医学
Online ISSN : 2189-7980
Print ISSN : 1345-2894
ISSN-L : 1345-2894
農村部在住40代〜70代女性の性格特性と内分泌変動との関連 : 福島県南会津郡T町における調査をもとに
志賀 令明水野 兼志
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 11 巻 1 号 p. 58-63

詳細
抄録

福島県南会津郡T町に在住する40〜70代の女性計40名を対象にして,Y-G性格検査及びPOMSを施行した.また早朝絶食空腹時下における採血により,ACTH,コルチゾール,カテコールアミン3分画,エストラジオール,総コレステロール,中性脂肪,HDLの測定を行った.並行して循環動態機能付き血圧計によって動脈硬化指数(ASI)の測定を行った.これらを年代ごとに比較すると,Y-G性格検査では年代間の有意差はなかったが,50代ではPOMS A-H,F得点が高くV得点が低く抑うつ傾向の潜在をうかがわせた.この年代での末梢コルチゾール濃度は40代女性に比し有意に高く,ストレスがHPA-axisの亢進に結びつくことが知られた.また40〜50代女性で月経順調な者と不順になってから1年未満のものを比較すると,後者でACTH,コルチゾール濃度が前者に比して有意に高く,卵巣機能低下が更年期抑うつの発端になる可能性を示唆した.他方,アドレナリンは加齢に伴い上昇したが,その影響を差し引いてもY-G社会的不適応得点の高い者で有意に上昇した.この社会的不適応得点が高かった者では,アドレナリンの上昇に加えて,総コレステロール,中性脂肪の上昇を示した.上記から,社会的な不適応傾向のある女性では家族や地域での対人ストレスに対して,アドレナリンが上昇するだけではなく,コレステロール,中性脂肪の上昇をきたし,動脈硬化・冠状動脈疾患の危険性が高まることを示唆した.

著者関連情報
© 2006 一般社団法人 日本女性心身医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top