抄録
本研究は,温熱療法受療者の利用状況とその意識を検討することを目的とした.A療法院において調査の趣旨を説明し同意が得られた成人女性受療者102名を対象に利用状況とその意識について質問紙調査を行い,記入不備を除く98名(有効回答率96.1%)を分析対象とした.対象者の平均年齢は48.9±12.0歳で,全体の5割以上の者に現病歴があり,高血圧症や悪性腫瘍など生活習慣に関する疾患の者が大半を占め,その他には痛み,こりや冷え等の症状を有していた.個人の健康や病気に対する信念を表すJHLC得点は,いずれの年代においても,IHLCが最も高く,次いでFHLCの順となっていた.温熱療法の主な情報源は友人・知人,メディアや家族であった.利用動機は症状や疾病の改善が最も多く,次いで健康の維持増進や疾病の予防等であり,実際に温熱療法受療後の変化として,症状・病気がよくなった又は安定した,精神的に安定した等,肯定的な意見を持っていることが明らかとなった.これらの結果から,温熱療法受療者は,症状の改善・緩和を目的に医療機関で行われている治療以外にも何か自分自身でできることを求め,家族や知人など周囲の協力も得ながら,積極的・自主的に行動する意識が高いことが示唆された.