抄録
本研究の目的は,一般大学生を対象として,日常的に経験する痛みに関する実態把握を性差の観点から検討することであった.対象者は,408名(男性196名,平均年齢2128±1.76歳;女性212名,平均年齢20.77±1.49歳)であり,質問内容は,過去1カ月における「痛み経験の有無」「痛みの部位(複数回答可)」「最も強い痛みの部位と痛みの主観的評価」「痛みが原因による鎮痛薬服用の有無(市販薬,あるいは医師からの処方薬)」「痛みが原因による通院の有無」「痛みによる日常生活への支障の程度」「痛みへの対処方略」であった.調査の結果,男女ともに,6割以上が日常的な痛みを経験していることが確認された.また,わが国の青年期における痛み経験の性差はみられにくいことが示された.さらに,痛みに対して破局的に対処してしまう傾向と主観的な痛みとの関連が示されたことから,従来の身体的対処(薬物療法)に加えて,心理的対処(痛みに対する心理教育や認知の変容)を行うことが,青年期の痛みに対するマネジメントを行う際に有用な技法になることが示唆された.