抄録
本研究の目的は,先行研究を資料とし,育児期にある母親のストレス反応の生理的評価指標による評価方法,及び心理・社会的評価指標との関連について整理,検討することである.研究方法として,2000〜2010年(9月末)における「医学中央雑誌web版Ver.4」,「Pub Med」を用いて,第1段階では「育児:infant-rearing」「母親:maternal」「産後:postpartum」,第2段階では「不安:anxiety」「抑うつ:depression」,第3段階では「自律神経:autonomic」「ホルモン:hormone」「免疫:immunity」「酸化ストレスマーカー:oxidative stress marker」によるキーワード検索を行った.分析対象は,国内文献8件,海外文献18件の計26件である.対象文献を,対象者,調査時期,評価指標の種類,生理的評価指標と心理・社会的評価指標との関連について分析した.その結果,生理的評価指標としてはコルチゾールが最も多く,検体は血液,唾液,尿であった.また,コルチゾールは,心理的にネガティブな反応と正の関連を示す報告が多かったが,一部異なる結果を示すものや,直接的な関連がないとする報告もあった.さらに,ドーパミン,甲状腺ホルモン,卵巣ホルモン,及びS-IgAに関しても各々の報告により異なる結果を示していた.以上により,育児期にある母親のストレス反応に関する研究では,より適切な評価指標を用いて,生理・心理・社会的観点から多面的に検討する必要があると示唆された.