抄録
本研究では,認知行動カウンセリングの立場から,身体不満足感ならびに過食,ダイエット行動の発生メカニズムについて検討を行った.研究1では,258名の大学生女性を対象として調査を実施した.その結果,外見スキーマの自己評価の特徴(Self-Evaluative Salience : SES)とボディチェッキング認知の安全希求,体重・身体コントロール(Safety Beliefs and Body Control : SBBC)は,身体不満足感ならびに過食,ダイエット行動に影響を及ぼしていることが示された.研究2では,平均値以上のSESとSBBCの得点を示す29名の大学生女性を対象として,SESとSBBCが身体不満足感の原因になるかどうかを実験的に検討した.実験参加者は,SES活性条件,SBBC活性条件,非活性条件のいずれかに分けられた.その結果,外見に関する否定的思考について,条件と時期の交互作用が有意であった(F(2,26)=6.55,p<.01).下位検定を行った結果,SES活性条件ならびにSBBC活性条件では,非活性条件と比較して,外見に関する否定的思考が有意に増加したことが示された(それぞれp<.01,p<.05).自己の顔と外見全般に関する不満を測定する尺度の効果サイズは,小さいながらも意味のある値であった.本研究により,SESとSBBCが身体不満足感ならびに過食,ダイエット行動の発生要因の一部であることが示唆された.