抄録
【目的】本研究は,乳幼児を持つ母親と父親のメンタルヘルス状態,母親と父親のメンタルヘルスの関連,そして.母親と父親のメンタルヘルスに最も関連する要因を明らかにすることを目的とした.本研究の結果を母親のメンタルヘルス向上の支援策の検討に役立てることに研究の意義がある.【方法】父母552組に調査票を配布し郵送にて回収した.調査内容は,社会的背景の他にメンタルヘルスの測定には精神健康度(以下GHQ12)を用いた.統計分析は,主に記述統計の他カテゴリカル回帰分析を用いた.【結果】1.母親のメンタルヘルス状態は父親のメンタルヘルス状態より有意に悪かった.2.母親のメンタルヘルスと父親のメンタルヘルスは統計上有意に関連していた.3.母親のメンタルヘルスに最も影響している要因は,「父親の学歴」「父親の育児に対する母親の満足度」「母親の健康」であった.父親のメンタルヘルスに最も影響している要因は,「母親のメンタルヘルス」「父親の学歴」「父親が望んだ妊娠出産か」であった.【考察】母親のメンタルヘルスは父親のメンタルヘルスより悪かった.これは,母親と父親間に育児に対する責任感の大きなギャップがあることが関連していると推察される.また,母親と父親のメンタルヘルスは関連していることから,母親のみを対象とするのではなくペアで調査し対応策を検討することの重要性が示唆された.今回の調査では,母親のメンタルヘルス向上には,父親の子の受容と育児準備教育の充実,母体の回復を促すケアの重要性が示唆された.最後に,地域環境特性の要因も考慮に入れた研究が母親のメンタルヘルス向上には不可欠であることが明らかになった.