2022 年 26 巻 3 号 p. 338-347
【目的】女性の月経随伴症状による心理的苦痛の構造を確認し,ウェルビーイングとの関連について明らかにすることを目的とした.【方法】20~30代の女性500名を対象にアンケート調査を実施した.月経随伴症状による心理的苦痛を測定する尺度として,「コントロール不能感」「不遇感」の2つの下位尺度から成る月経随伴症状負担感尺度を用いた.また,症状があることによって抱く自己嫌悪感を測定するため,「自己への怒り・無力感」「自己滅亡感」の2つの下位尺度から成る尺度を作成した.心理的ウェルビーイングの測定には,心理的well-being尺度(「人格的成長」「人生における目的」「自律性」「自己受容」「環境制御力」「積極的な他者関係」の6因子),自尊感情尺度,主観的幸福度,生活満足度を用いた.月経随伴症状負担感尺度および月経による自己嫌悪尺度の下位尺度それぞれについて,得点によって高群・低群に群分けを行い,心理的ウェルビーイングの測定尺度の得点の群間比較を行った.【結果】心理的ウェルビーイング測定尺度のうち,自尊感情尺度,主観的幸福度,生活満足度の得点については,心理的苦痛の測定尺度における4つの下位尺度すべてで高群が低群よりも低い値を示した.心理的well-being尺度は,6因子すべてにおいて,症状による自己嫌悪尺度の2つの下位尺度で高群が低群よりも低かった.月経随伴症状負担感尺度では,「人生における目的」「自己受容」の得点について,高群が低群よりも低かった.さらに,「不遇感」の高群と低群の間には,「人格的成長」「積極的な他者関係」の得点にも有意差がみられた.【結論】本研究によって,月経随伴症状の存在によって抱く心理的苦痛が高い者はウェルビーイングが低く,特に,自身の過去や現在の受容,未来や成長への希望,他者との信頼関係に関する認識と関連があることが示唆された.