2025 年 30 巻 2 号 p. 217-226
妊娠・出産を契機とした慢性疼痛は,女性の身体的・心理的健康に影響を及ぼし,育児や家事への支障を引き起こすことがある.本研究では,2021年に実施した日本国内の大規模インターネット調査(JACSIS妊産婦調査)のデータを用いて,家庭生活や育児に関する相談経験と慢性疼痛の関連について検討し,さらに公的機関への相談を希望しながら実際には相談に至らなかった背景要因を明らかにすることを試みた.0~2歳児を育てる女性4,371人を対象に分析を行い,慢性疼痛を妊娠・出産を契機として新たに生じ3カ月以上持続する痛みと定義した.慢性疼痛の有症率は9.1%であり,公的機関に相談した群および相談を希望しながら行わなかった群では,いずれも慢性疼痛のリスクが有意に高かった.公的機関への相談を希望しながら実際には相談に至らなかった理由としては,「子どもを連れて行くのが大変」「どこに相談すればよいかわからない」「公的機関に相談するほどの問題かわからない」などが多く挙げられた.一方で,調査項目には「そもそも相談しようと考えなかった」といった選択肢は含まれておらず,そのような層の存在も今後の検討課題である.家庭生活や育児に関する悩みと慢性疼痛との関連が示唆される本研究の結果は,支援者による早期の気づきと子育て中の女性の包括的支援を可能とする相談体制の構築,ならびに相談しやすい環境づくりの必要性を示している.