抄録
月経前に周期的に種々の症状が自覚される月経前症候群(PMS)の頻度は高く,しかもその症状の種類の多いことは知られている.また,記録方法としては,日誌的な即時的記録法(前向き記録)が症状の自覚と正確な診断に有意義であることが指摘されている.そこで我々は,米国で開発されたユタPMSカレンダーIIを参考にして,本邦における身体症状,精神症状,社会的症状を検討してその症状リストを添付し,しかも症状の頻度や程度が視覚的情報として明瞭に記録されるように工夫した,日誌的な方法による即時的記録法「PMSメモリー」を開発した.加えて本記録では,基礎体温測定値,月経周期,経血量,体重,服用薬剤などPMSの診断に必要な諸要件が同一紙面に記録できるように構成され,診断者のための便宜のみならず記録者の簡便さもはかられている.本記録法による実践記録を検討したところ,その有用性が認められたので報告する.