女性心身医学
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更年期女性の精神・心理症状の特徴 : 45歳から65歳までの長野・大阪女性の健康実態調査から
吉沢 豊予子跡上 富美平石 皆子中村 康香
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2000 年 5 巻 1 号 p. 38-46

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抄録

更年期時期に女性が体験する精神・心理症状は卵巣機能低下に伴うエストロゲンレベルの低下,さらにはその時の心理社会的要因が絡まって出現してくる症状であるとの考え方が一般的である.私たちは,この時期に女性が体験する精神・心理症状とはどのような特徴があり,また特にどのような要因によって影響を受けているかを明らかにする目的で本研究を実施した.長野・大阪地区に住む45〜65歳の女性1,502名を対象として,更年期時期に体験する症状,その影響要因,更年期のとらえ方によって構成された質問紙によって調査を実施した.結果 : 更年期時期に体験する症状を因子分析したところ,第一因子として「気分変調」と命名した精神・心理症状が抽出された.またこの「気分変調」は他因子との相関は統計的に有意差のない負の相関を示し,他の因子間同士が正の有意差のある相関とは異なるものであった.また,「気分変調」因子の得点の高いものが,他の身体的症状が高い得点を示すことはなく,精神・心理症状は身体症状と連動して出現する症状ではないことが明らかとなった.また,「気分変調」因子に影響する要因を明らかにするために,段階別重回帰分析を行ったところ,ストレスの程度,現在の健康状態,PMSの認識,閉経段階,産後の肥立の5つの要因が投入された.特にストレス程度,健康状態の認識は強い関連のある要因であることが示され,女性のもつ多重役割がストレス状態を作っていた.またPMSの認識や産後の肥立という経験の有無は更年期の時期に体験する精神・心理症状の予測要因となりうることが明らかとなった.今後更年期女性にはメンタルヘルスに力点をおいたアプローチ法が重要であると考える.

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© 2000 一般社団法人 日本女性心身医学会
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