抄録
当院女性心身外来では,妊産婦や新婦を心理面から支持対応する体制を整えている.最近,子供を持つことが自分にとってネガティブであると強く意識することにより分娩不安,育児不安を生じた2例を経験した.両症例ともTEG(東大式エゴグラム)にて深いU型を示し,母児分離が不完全なまま自分が母親になろうとする事で混乱を生じてきたと推測された.この2症例の生育歴,妊娠・産褥経過とその治療過程を考察する事で育児にとまどいをもった本質的な理由とこの母親の苦悩が受容でき,良い経験を得た.今後,分娩後になかなか母性の芽生えないけ親だけでなく,このように母性はあるが母親になることを拒否する母親の増加が予想される.この状況を起こしている現代の病理と,産婦人科で行うことができる治療はどういう事なのかを考える.