女性心身医学
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右下腹部痛を中心として,多数の心身症症状を訴えた女性の症例 : 複雑な心理・社会的背景の下に発症した慢性疼痛性障害(ワークショップ 心身相関を考える : 症例検討)(<特集>第5回日本女性心身医学会研修会報告)
森村 美奈石河 修
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2003 年 8 巻 2 号 p. 151-154

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抄録
目的:一般的な治療に奏効しない慢性的な疼痛を主訴とする患者への対応は,各専門科において問題となるところだが,明らかな器質疾患を認めずに,かつ原因を特定できない慢性の疼痛性障害については,特に対応に苦慮する.婦人科診療においても,骨盤部領域の慢性疼痛の症状は日常的に遭遇する症状であるが,原因が特定されない場合,経過を見ながら消炎鎮痛剤等で対症的に加療されている症例もある.方法・結果:今回この慢性疼痛を中心として,様々な心身症症状を呈した症例を経験したため,今回のワークの症例として提示した.症例は初診時年齢25歳の女性で,職業は会社員,産婦人科の初診時主訴は外陰部掻痒,性感染症の検査希望,月経困難症状であったが,産婦人科受診より以前から腰痛による整形外科とリハビリ科受診,慢性胃炎症状に対する内科受診,そして神経精神科より安定剤の投与を受けていた.初診時の検査にてクラミジア感染症が診断され,経膣超音波検査によって直径3cmの奨膜下筋腫と直径3cmの右卵巣嚢腫の存在が認められた.クラミジアの除菌後も右下腹部痛症状を訴え続けたものの,内診所見としては両側付属器周囲に圧痛を認めたが,他党的には明らかな炎症所見は認めなかった.すでに他科から鎮痛剤を含めた種々の投薬を受けていたため,消炎鎮痛剤の増量を抑えることを目標に治療を行った.しかし,複雑な社会背景が症状の発症と増悪に関与し,様々な心身症症状の出現が治療を困難にした.考察:心身医学において,慢性の疼痛症状はしばしば問題になるところだが,諸外国においては,慢性疼痛についての報告が婦人科および泌尿器科領域から報告されている2)3)これらの症状への対応としては,充分な臨床検査を行ったうえで,原因の特定できないものには,カウンセリングや心理療法を併用し,適切な薬物の適量投与とともに,基礎体温表を利用した病状認識や行動療法などを積極的に行う必要があると考える.
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© 2003 一般社団法人 日本女性心身医学会
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