日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
会議情報

強光応答に欠損を持つシロイヌナズナ変異体のクロロフィル蛍光挙動による単離
*樋口 美栄子園池 公毅
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 1

詳細
抄録

クロロフィル蛍光は光合成の状態をよく反映すると考えられており,古くから多くの光合成研究に用いられてきた.我々はクロロフィル蛍光を二次元画像として経時的に測定できるシステムを用い,シロイヌナズナT-DNAタグラインのスクリーニングを行った.主に強光応答に欠損を持つ変異体を単離することを目的として,2段階の強光条件を用いた.まず,短時間の強光応答を観察するため,通常の光条件下で7日間成育させたシロイヌナズナに短時間(12秒)の強光を照射し,非定常状態のクロロフィル蛍光挙動を観察した.さらに長時間の強光応答として,24時間強光にさらした後に蛍光挙動によるスクリーニングを行った.これまでに約8,000個体の蛍光挙動を観察し,9つの候補株が得られている.このうち6個体については短時間の強光照射で野生株と異なる蛍光挙動を示しており,残りの3個体については24時間の強光処理後に挙動の違いが認められた.単離した候補株について,パルス変調蛍光法を用いて700μ Eの励起光照射時における定常状態の光合成を調べたところ,qP,qN,ETR,Fv/Fmのパラメーターが野生株と異なる値を示したが、定常状態の光合成には影響が見られない個体も存在した.この結果は,本スクリーニングにより強光下における非光化学消光,光化学消光,光合成電子伝達に欠損のある変異体が単離できたことを示している.

著者関連情報
© 2003 日本植物生理学会
次の記事
feedback
Top