抄録
イネ紫外線抵抗性品種日本晴と感受性品種Kasalathの戻し交雑後代系統群を用いたQTL(量的形質遺伝子座)解析により、イネ染色体上には紫外線抵抗性に関与する6つのQTLが検出されている。このうち第10染色体上のQTL(qUVR-10)はこれらの QTLの中で最大の寄与率を示し、Kasalathの対立遺伝子が紫外線感受性にする。マップベースクローニングにより、qUVR-10は27kbの候補ゲノム領域内に存在することが判明し、その領域内にはシクロブタン型ピリミジン2量体(CPD)光回復酵素(photolyase)と高い相同性のある配列が存在した。qUVR-10近傍の組換え個体について、CPDに対するの光修復能力を測定したところ、修復能力に関与する遺伝子座とqUVR-10は一致した。日本晴とKasalath のCPD photolyaseのゲノム塩基配列の比較を行ったところ、高度に保存された領域において1塩基置換が認められ、それが1アミノ酸置換を生じることが推定された。これら結果よりqUVR-10はphotolyaseをコードしており、Kasalath 型のphotolyase遺伝子をもつ植物ではこのアミノ酸置換により光修復能が低下し、紫外線感受性になっていると推察された。