抄録
UVBやCO2大気環境が植物の生長に及ぼす影響の野外試験は他の環境要因の変化によって大きく左右されるので、それらの影響を正確に把握するには多年にわたる試験が必要である。我々は93年から宮城県鹿島台の実験水田や圃場に設置したオープントップチャンバーを用い、UVB付加(UVB蛍光管からの放射光をCellulose diacetate filmを通過させた290 nm以下の波長を除去した約1W/m2のUVBを付加)照射あるいは高濃度CO2大気(700 ppm)がイネの生育・収量に及ぼす影響について調査してきた。そのうち、本年会では、98年以降に得た結果について報告する。
実施した年度毎で程度の差は認められたものの、UVB付加によって地上部乾物重や籾重は減少した。年度の気候の違いにかかわらずUVB付加によって、玄米の大きさは小型化し、玄米に含まれるタンパク質含量は増加した。中でも貯蔵タンパク質(アルブミンーグロブリン、プロラミン、グルテリン)のうちグルテリン含量の増加が著しかった。これらUVB付加照射による影響は、高濃度CO2環境下においても同様であった。また、水田における試験の結果、分げつ期、幼穂形成期、登塾期の生育段階のうち登塾期に処理したUVB付加が玄米の小型化や貯蔵タンパク質の増加にもっとも効果的に働く事が分かった。今後はこのメカニズムを明らかにしたい。