抄録
紫外線B (UV-B) によって生成される DNA損傷の主産物の一つはシクロブタン型ピリミジン二量体 (CPD)である。CPDの修復機構としては暗修復と光修復が知られているが、植物においては光修復が主である。ところで、植物におけるCPD光回復酵素の細胞内局在性に関する知見は乏しく、アラビドプシス (Chen et al., 1996)とホウレンソウ (Hada et al., 1998)については、葉緑体に光回復酵素が存在しない可能性が報告されているが、イネに関しては不明である。本報告では、イネにおけるCPD光回復酵素の細胞内局在性について紹介する。
イネ・ササニシキの葉から葉緑体画分と核画分をショ糖密度勾配遠心法によって分画した。葉緑体の指標としては、クロロフィル量およびNADP-G3P-dehydrogenase活性を用い、さらに核および葉緑体の指標として定量PCR法による rbcSとrbcL量を用いた。得られた葉緑体画分と核画分を用い、アルカリ電気泳動法によりCPD光回復活性を測定した。その結果、核画分においては高いCPD光修復活性が認められたが、葉緑体画分ではCPD光修復活性は認められなかった。この結果、イネのCPD光回復酵素は核には局在し、葉緑体には局在しないことが示唆された。