日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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シロイヌナズナゲノム遺伝子破壊株を用いた葉緑体ジカルボン酸輸送体の機能解析
*谷口 光隆谷口 洋二郎長崎 順子川崎 通夫三宅 博杉山 達夫
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p. 158

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抄録
 葉緑体内包膜間におけるジカルボン酸の輸送は,窒素同化系への炭素骨格の供給,還元力輸送,アミノ酸代謝等において重要である.我々は,シロイヌナズナの2-オキソグルタル酸/リンゴ酸輸送体(OMT)とジカルボン酸全般を輸送するジカルボン酸輸送体(DCT)を同定し,輸送特性の差異を明らかにしてきた.今回,各輸送体遺伝子の破壊株を用いて生理機能の解析を行った.
 DCT遺伝子の破壊株は通常の大気条件下では生育できず,高CO2条件下でのみ生育可能であったことから,DCTは光呼吸経路に深く関与していることが示唆された.同様な表現型は以前にSomervilleらが単離したCS156株でも見られ,実際にCS156株ではDCT遺伝子上にアミノ酸置換を伴う点変異が起こっていることを確認した.一方,OMT遺伝子の破壊株は通常の大気条件下でも生育可能であり,窒素代謝系への炭素骨格の供給にはOMT-DCT共役輸送系が必須ではないことが示唆された.
 OMT及びDCTはオキサロ酢酸も効率良く輸送する.DCT遺伝子破壊株葉緑体へのオキサロ酢酸取り込みは2-オキソグルタル酸により阻害されるが,グルタミン酸では阻害されなかった.一方,OMT遺伝子破壊株ではグルタミン酸により強く阻害された.以上の結果は葉緑体のオキサロ酢酸輸送はOMTおよびDCTを介して主に行われていることを示唆している.
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© 2003 日本植物生理学会
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