抄録
我々は、シロイヌナズナのグルタチオン(GSH)が多く蓄積した植物体の解析から、 光強度依存的な花成の促進経路にGSHが関与することをすでに報告した。本報告では、その経路と既知の花成経路との関係を調べた。花成決定因子であるFTやAGL20/SOC1遺伝子の発現量は、強光下で低下しており、それらの遺伝子の上位制御因子であるGIの変異体ではアリル非依存的に光強度依存的花成の促進が認められたことから、光強度依存的な花成の促進はGIやFT 、AGL20/SOC1遺伝子を介さないと考えられた。gi 変異体は、野生型に比べGSHの蓄積量が多かったことから、GI遺伝子がGSHの蓄積量を抑制的に制御していることがわかった。lfy変異体の光強度依存的花成を調べたところ、光強度依存的な花成の促進は認められなかった。これは、光強度依存的花成の促進にLFY遺伝子が関与することを示している。LFY遺伝子の発現量は、異なる光強度下で差は認められなかったことから、少なくともLFY遺伝子による制御は遺伝子発現レベルではないと考えられる。