抄録
当研究室では、大腸菌を用いた機能スクリーニング法により塩生植物由来の耐塩性関連遺伝子の探索を進めて来た。その結果、シチメンソウ (Suaeda japonica) から作成した cDNA ライブラリーから 670 アミノ酸からなる親水性の高いタンパク質をコードする cDNA (s284) を導入した大腸菌に顕著な耐塩性の向上が認められた。このアミノ酸配列は PSTTK とそれに類似するアミノ酸配列が合計 17 回繰り返される領域 (PSTTK repeats) を有すこと、キンギョソウのトランスポゼース (TNP1) と一部相同性を示すことが明らかとなった。そこで、s284 における PSTTK repeats をプローブとして、様々な他種植物を用いてサザンハイブリダイゼーションをおこなった結果、非塩生植物ではバンドが検出されなかったのに対し、シチメンソウと同属の塩生植物であるハママツナでは非常に相同性の高い配列を有していることが確認された。次に、シチメンソウゲノムライブラリーをスクリーニングし、s284 周辺ゲノムの単離、配列の解析を行った。その結果、CACTACTACAAAAT を terminal inverted repeats (TIR) とする En/Spm 型トランスポゾン (Tsj1) 内に s284 がコードされていることを見出した。