抄録
通性CAM(多肉植物型酸代謝)植物・アイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)が塩ストレスでCAM化する際、葉緑体で、デンプン代謝に関与する酵素の活性が上昇するのと同時に、グルコース6-リン酸(G6P)輸送活性が誘導される。昨年度本学会で我々はアイスプラントのG6P/リン酸輸送体(GPT)には、Hauslerらが報告したGPT1の他にアイソザイムがもう一つ(GPT2)あり、両者ともCAM化によって葉での転写産物量が増加することを報告した。
通常、C3植物ではGPTの葉での発現は低いが、根での発現は高くデンプン合成の基質としてG6Pをアミロプラスト内へ輸送していることがことが知られている。そこで今回、我々はGPT1とGPT2がそれぞれ根の組織でどの程度発現しているか、半定量的RT-PCR法を用いて調べた。その結果、植物体がC3型であるかCAM型であるかに関わらず、GPT1の根での転写産物量はCAM型の葉と同じ位高いレベルだったのに対し、GPT2の転写産物はほとんど検出できなかった。このことは、GPT1はアミロプラストとCAM型葉緑体とで共通して働いているのに対し、GPT2はCAM型葉緑体に特異的である可能性を示唆している。現在、その他の組織での発現量の違いについても調査中である。