抄録
植物細胞内のH2O2濃度は、アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)およびカタラーゼの発現量によって調節されている。細胞質型APXは、他のAPXアイソザイムに較べ発現量が高く、光酸化ストレス応答性も顕著であることから、抗酸化作用の以外にストレス応答時のH2O2シグナルの調節作用を持つことが考えられる。そこで今回、細胞質型APX解析のためのモデル細胞としてタバコBY-2細胞に着目し、APXが細胞内酸化還元状態に及ぼす影響について検討した。APX分別定量の結果、細胞質型APX活性は全可溶性APX活性の88%を占めていた。シロイヌナズナ細胞質型APXcDNA (APX1) をpBI121に導入後、BY-2細胞に形質転換した。その結果、APX活性が野生株の1/4にまで減少した細胞質型APX発現抑制細胞(cAPX-S1)が得られた。cAPX-S1のアスコルビン酸再還元系酵素活性およびアスコルビン酸とグルタチオン含量に有意な変化は認められなかった。しかし、活性酸素に由来するフルオレッセイン蛍光の有意な増加が観察された。