抄録
酵母に見いだされるアスコルビン酸(AsA)のC5アナログ(エリスロAsA: eAsA)は植物のAsAと酷似した経路で合成され、その合成能を欠く変異株は酸化ストレス感受性を示す。我々は今回、植物のAsA代謝の理解にモデルとして酵母を用い、酸化型eAsA(eDHA)の生理機能について調べたので報告する。
PGKプロモーターの下流に、酵素タンパク質がいずれも細胞質で発現するよう改変したタバコ由来AsA酸化酵素(ASO)およびイネ由来デヒドロAsA還元酵素(DHAR)のcDNAを挿入したpFL61をS. cerevisiae YPH250に形質転換した。導入した遺伝子の発現は抽出した可溶性画分の酵素活性から確認した。対数増殖期の細胞を用いて測定した過酸化水素に対する感受性と被酸化ストレス度はいずれも、DHAR導入株、pFL61導入株、ASO導入株の順に高かった。このことは生理条件下ではeAsA自体が活性酸素を消去するのではなく、抗酸化能を持たないeDHAの増加が酵母の酸化ストレス耐性を惹起することを強く示唆する。耐性を付与する要因として細胞内総グルタチオン濃度の増加を予想し、実際に両者の対応関係を認めた。現在酵母の過酸化水素に対する既知の応答系との関係を検討している。