日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
会議情報

NAD代謝活性化によるROSストレス耐性の付与
*林 光紀手塚 修文内宮 博文
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 173

詳細
抄録
トウモロコシHm1遺伝子はNADPH-dependent HC-toxin reductase(HCTR)をコードし、北方斑点病菌の生産するHC-toxinを無毒化する。我々はイネからHCTR遺伝子とアミノ酸レベルで78%の相同性がある遺伝子(YK1遺伝子と呼ぶ)を単離した。この遺伝子を高発現させた形質転換イネは多くのストレスに対して耐性を示すことを明らかにした。その1つは、イネイモチ病原菌に対する抵抗性の獲得である。更に、これら形質転換植物は、紫外線処理、塩処理、冠水処理などにも耐性を示した。H2O2に対しても耐性を示したことからYK1はROSを介した抵抗性を植物に付与するものと思われる(Uchimiya et al. 2002)。YK1は生体内のNAD(P)H → NAD(P)の反応を促進し、標的となる物質を還元していると考えられる。今回我々はこの遺伝子の高発現はNAD(P)(H)の量を増加させることを見出した。すなわち、イネ細胞抽出液とNADの前駆体であるDeamino-NADを混合して反応させ、生成させたNADの量を測定することでNAD合成酵素活性を比較した。その結果、形質転換イネにおけるNAD合成酵素活性の上昇が認められた。従って、NAD(P)(H)依存的代謝系がROSストレス耐性と密接に関係することが示された。
著者関連情報
© 2003 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top