抄録
我々はエンドウPisum sativum L. 種子の成熟と発芽におけるブラシノステロイド(BR)の生合成および代謝の役割を知るために、成熟と発芽の両過程における内生BRの含量をGC-MSを用いて定量した。さらにBRの生合成・代謝に関与するP450酵素遺伝子をクローニングし、RT-PCRによってその発現量を調べた。種子の成長にともない6-deoxoCSからカスタステロン(CS)への変換を触媒するD酵素の発現量が増大したが、これに比例してブラシノライド(BL)とCSの量が増加した。成長が終了するころにはD酵素の発現量が減少するとともに、BLとCSの量が激減し、6-deoxoCSが多量に蓄積された。したがって、このような現象にはD酵素が関与していると考えられた。また、代謝酵素BAS1は種子成長中に常に一定レベル以上あるため、完熟種子における6-deoxoCSの減少やBLとCSの消滅には、BAS1が関与していると考えられた。一方、6-deoxoCS以前の前駆体BRは完熟種子においても大きく減少はしなかった。したがって、これらのBRは種子における貯蔵型BRとして保持されていると考えられる。発芽過程におけるBRの内生量とBRの生合成・代謝遺伝子の発現量の変化は現在検討中である。