日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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光合成系カロテノイドの一重項励起状態における緩和挙動のKerr-gate蛍光分光による追跡
*藤井 律子小山 泰中村 亮介兼松 泰男
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p. 190

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抄録
光合成細菌の光捕穫作用においてカロテノイド(Car)は、光を吸収して光学活性1Bu+状態に励起され、一重項エネルギーをバクテリオクロロフィルに伝達する。このエネルギー伝達には、1Bu+状態のみならず、より低エネルギーの光学禁制3Ag、1Bu、2Ag状態も関与すること、またこれに競争する内部転換は非常に速く、振動緩和・振動再分配が完了する前に起こることが示唆されている。光合成系には共役二重結合数(n)が9から13の様々なCarが存在しているが、その一重項状態のエネルギーはnの関数に比例して大きく変化し、特に内部転換経路はCarによって大きく異なることが予想されている。このような内部転換・振動緩和・振動再分配が混同した複雑な系では、スペクトル分解能が高く、細かい遷移のエネルギーをスペクトルから直接読み取ることができるKerr-gate時間分解蛍光は非常に強力な測定手段である。そこで今回我々は、光合成細菌に選択されているn = 9 - 12のCar、ヌロスポレン、スフェロイデン、リコペン、アンヒドロロドビブリンについてKerr-gate時間分解蛍光スペクトルを測定し、C=CおよびC-C伸縮振動の2つのモードの振動再分配及び振動緩和を加味し、Franck-Condon因子・振動緩和速度等をパラメータとした内部転換のシミュレーションを行うことによってこの複雑な緩和挙動の解析を試みた。
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© 2003 日本植物生理学会
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