抄録
維管束分化の空間的制御機構を解明するため,我々はシロイヌナズナから葉脈パターンに異常のある変異体(van1~van7)を単離し解析している.今回,細脈が著しく断片化した状態で形成されるvan3変異体について,オーキシン分布およびオーキシンに関わる遺伝子との相互作用を検討したので報告する.
まずDR5::GUS遺伝子(オーキシン誘導性のプロモーターとGUSの融合遺伝子)を用い,オーキシン分布と葉脈形成について調査した.野生型においてDR5は,細脈が形成される場で,まずスポット状(断片的)に何ヶ所かで発現し,その後スポットから,発現した細胞が前形成層に分化しつつ発現部位が広がっていき,最後にそれぞれのスポット由来の発現がつながった.van3においてもDR5は,まずスポット状に発現していたが,その数は少なかった.そこで細脈の前形成層は,オーキシンの蓄積とともに断片的に形成されること,またvan3ではその形成能が低下しているため,前形成層がつながらず,断片化してしまうと考えられた.
またvan3とオーキシン極性輸送に異常をもつpin1変異体と二重変異体を作成したところ,additiveな表現型となった.したがってVAN3とPIN1は遺伝的に独立であり,VAN3の機能はオーキシンの極性輸送と直接は関連しない可能性が示唆された.現在gnや mp変異体との二重変異体も作成しており,これらの結果についても合わせて考察したい.