抄録
光合成細菌において、光エネルギーは、周辺アンテナであるLH2複合体
から光反応中心(RC)を囲むように存在するLH1複合体へ、最終的にはRC
に伝達される。RCが電子伝達を行った直後の酸化状態で更に光を受けた
時に生成する有害なバクテリオクロロフィル(BChl)の三重項状態
(T1)から生体を守るために、RCに結合したカロテノイド
(Car) はT1 BChlをクエンチする「光保護作用」を行うと
されているが、LH1では、「酸化状態のRC」に伝達する光エネルギーを
制限してT1 BChlの生成を妨げる形の光保護作用も起り得
ると考えた。そこで我々は、光合成の最小ユニットであるRC-LH1
(Core)複合体に注目し、CarとBChlの励起状態のダイナミクスをLH2と
比較した。Rhodobacter sphaeroides G1Cから植田らの方法で
単離・精製・安定化し(2001年度日本植物生理学会要旨参照)、SDS-
PAGEでペプチド組成を確認したCore複合体のサブピコ秒時間分解吸収ス
ペクトルを測定した結果、LH2と大きく異なり、Carの三重項励起状態が
早くから顕著に現れ、Car→BChlのエネルギー伝達の結果として
現れるQyが少ないことが観測された。これは、Carから
BChlへの一重項エネルギー伝達の効率を落とすようにダイナミクスが変
化したと解釈できる。