抄録
ヘリオバクテリアの光化学反応中心は、シアノバクテリアや高等植物の系I型反応中心と同じFe-Sタイプである。この光合成細菌はグラム陽性であり、集光性タンパクやアンテナ色素会合体をもたない。反応中心コアタンパクはホモダイマー構造と推測されているが、含まれる電子伝達成分やそれらの分子内配置・配向性は系I型と同じであることが期待される。我々は昨年の本大会において、好熱性のHeliobacterium modesticaldumから異なる可溶化方法により得た2種類の反応中心標品の分光学的特性について報告した。しかしいずれの標品においても二次電子受容体であるキノンの存在を示唆するデーターは得られなかった。また低温閃光照射においては、t1/2 = 2 msで再還元されるP798+が観測され、Fe-Sからの電荷再結合に帰因すると考えられた。このことを確認するために膜標品を調製し、ESRによるFe-Sセンターの観測を行うことにした。ジチオナイトの添加により、比較的ブロードなFe-Sセンターのシグナルが観測されたが、このシグナルは低温照射(77K)において還元されてくる成分と同一であった。このことは、膜結合型のFe-Sタンパク質が反応中心内に存在していることを示している。また観測されたシグナルは2成分から構成され、温度依存性が異なっていた。現在、このシグナルについて詳細に解析中である。