日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
会議情報

ヒメツリガネゴケ硝酸イオン能動輸送体のクローニングと発現解析
*辻本 良真山崎 秀将鈴木 大小俣 達男
著者情報
会議録・要旨集 フリー

p. 210

詳細
抄録
硝酸イオン能動輸送体(NRT)は硝酸同化経路の最初の段階に位置しており、植物ではNRT1とNRT2の2種が知られている。NRT1はペプチドトランスポーターファミリーに分類され高等植物でのみ見つかっているのに対し、NRT2は原核・真核生物を問わず広く分布している。我々は相同組み換えによる遺伝子機能解析が容易に行えるセン類のヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)を材料としてNRT2の構造と機能を解析することを目的とし、cDNAクローニングを行った。まずヒメツリガネゴケのNRT2ホモログをRT-PCRやcDNAライブラリからのスクリーニングによって探したところ、NRT2;1からNRT2;5の5つが見つかった。これらの推定アミノ酸配列を分子系統樹に当てはめたところ、全てがセン類の系統学的な位置と同じく緑藻と維管束植物の間にあり、しかも維管束植物のNRT2に比較的高い同一性を示した。また植物で硝酸イオン輸送活性の制御に関わると推定されているC末端領域のセリン残基とその周辺の構造も保存されており、実際に硝酸イオンの取り込み活性がアンモニアによって阻害されることが確認された。さらにNRT2mRNA発現は高等植物の場合と同様に硝酸によって誘導された。以上の結果からヒメツリガネゴケは植物のNRT2の遺伝子発現と活性調節の研究の良いモデル系となることが確認された。
著者関連情報
© 2003 日本植物生理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top