日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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Synechococcus sp. PCC7942 の硝酸イオン/亜硝酸イオン能動輸送体の制御機構の解析
*高谷 信之前田 真一犬伏 加恵小俣 達男
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p. 209

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抄録
 ラン藻Synechococcus sp. PCC7942 の硝酸イオン/亜硝酸イオン能動輸送体(NRT)の活性は、培地へのアンモニアの添加により可逆的に阻害される。このラン藻のNRTは、ABC型の輸送体であるが、ATP結合サブユニットのひとつであるNrtCが他の同族輸送体に例のないC末端側ドメイン(R ドメイン)を持っている。R ドメイン はNRTの活性には必須ではないが、アンモニアによるNRTの活性阻害に関与していることが明らかにされている。しかし、どのような分子機構によりR ドメイン がNRTの活性を制御しているかは解明されていない。我々は、R ドメイン がNRTの基質結合タンパク質であるNrtAと30%の同一性を持つことに着目して、大腸菌に大量発現させたR ドメインの生化学的性質を調べることにした。近年ラン藻において細胞内の窒素栄養状態を検知するシグナルとして2-オキソグルタル酸(2-OG)の役割が明らかにされつつあるので、R ドメイン と2-OG の結合について調べた結果、R ドメインが2-OG と特異的に結合すること(Kd =190μM)が明らかになった。次にSynechococcus sp. PCC7942の細胞内2-OG濃度を測定したところ、硝酸イオンまたは亜硝酸イオンを窒素源にしている場合には約150μMであり、アンモニア添加後その濃度は急速に低下(約10μM)した。以上の結果から、R ドメインは2-OGと結合、解離することによりNRTの活性を制御していると推定した。
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© 2003 日本植物生理学会
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