日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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ラン藻の熱ショック応答に関わる因子の解析
*鈴木 石根村田 紀夫
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p. 229

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抄録
生物は急激な環境温度の上昇に曝されると、いわゆる熱ショックタンパク質を発現させて適応することが知られている。我々はDNAマイクロアレイを用いて、ラン藻Synechocystis sp. PCC 6803の熱ショック条件下での遺伝子発現プロファイルを解析した。多数の熱ショックタンパク質の遺伝子に加えて、ヒスチジンキナーゼ遺伝子の発現が誘導されることがわかった。その熱ショック誘導性のヒスチジンキナーゼ遺伝子の破壊株は、野生株に比べ熱ショックに対する耐性が明らかに高まっていた。また、その変異株では通常の培養温度(34℃)において、いくつかの熱ショックタンパク質の遺伝子発現が顕著に高まっていることがわかった。これらの結果から、ラン藻にはこのヒスチジンキナーゼにより熱ショックタンパク質の発現を抑制する機構が存在することが示唆された。ラン藻にはHrcAといわれる、熱ショックタンパク質遺伝子の発現抑制因子の存在が知られている。我々はこの転写調節因子の破壊株も作製し、その遺伝子発現におよぼす影響を調べた。その結果、熱ショック誘導性のヒスチジンキナーゼと転写因子HrcAは独立に熱ショックタンパク質の遺伝子群を制御していることが明らかになった。これらの結果をもとに、ラン藻の熱ショック応答の機構について考察する。
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© 2003 日本植物生理学会
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