抄録
オゾンは光化学オキシダントの主成分であり、植物に取り込まれるとエチレン(ET)、ジャスモン酸(JA)、サリチル酸(SA)を介した遺伝子発現を誘導する。本発表ではcDNAマクロアレイを用いてオゾン誘導性遺伝子の単離及びそれらの発現のシグナル依存性について検証した。
0.2ppmのオゾン暴露と非暴露を12時間行なったシロイヌナズナから調製したmRNAを用いてcDNAマクロアレイをスクリーニングした結果、オゾン暴露により発現変化する遺伝子を245クローン(発現増加185クローン、発現減少60クローン)単離することができた。次に、オゾンにより発現増加するクローンを用いてサブセットアレイを作製し、これらの発現誘導性をET、JA、SAシグナル伝達変異体(ein2-1、jar1-1、npr1-1)で検証した。約半数の遺伝子の発現誘導がein2-1で抑制された事から、オゾンによる遺伝子発現は主にETによって制御されていることが示唆された。さらに、オゾン暴露時のET、JA、SAシグナル相互作用について調べた結果、多くの遺伝子の発現が各シグナル物質により拮抗的に制御されていた。特にETやJA経路によって誘導されるcell rescue/defenseに関与する遺伝子群の発現はSAシグナルによって抑制されることから、SAシグナル伝達経路はETやJA経路により誘導される遺伝子に拮抗的に働くことが示唆された。