日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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リグニン脱水素重合における細胞壁結合性ペルオキシダーゼの役割と局在
*佐々木 慎弥小川 直人青山 渉西田 友昭堤 祐司近藤 隆一郎
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p. 274

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抄録
【目的】リグニンは植物における主要な構成成分であり、その生合成過程の最終段階はペルオキシダーゼによる脱水素重合だと考えられている。しかしながら、その脱水素重合過程については、ラジカルメディエーターによる脱水素重合説も含めて、いまだ明らかになっていない。したがって本研究では、ポプラカルスから精製したペルオキシダーゼアイソザイム(CWPO-C)のin vitroによるリグニン脱水素重合メカニズムおよび樹木中における局在について検討した。
【方法・結果】リグニンが脱水素重合される過程において、リグニンpre-polymerの酸化によるラジカル形成が必須となる。そこでペルオキシダーゼの高分子基質に対する酸化能の検討を行ったところ、CWPO-Cはシナピルアルコールおよびダイマーに対して同等に高い酸化速度を示し、シナピルアルコールポリマーに対しても高い酸化能を有することが明らかになった。一方で、HRPによって酸化・生成されたコニフェリルアルコールラジカルは、速やかにシナピルアルコールへ転移し酸化を触媒したが、ダイマーの酸化速度は急激に減少し、ポリマーについてはほとんど酸化できなかった。以上の結果より、CWPO-Cは高分子リグニンの形成に必須なpre-polymerのラジカル形成を触媒しうるアイソザイムであることが示された。また、CWPO-Cのポプラ樹木における局在を調査した結果、細胞壁にイオン結合した細胞壁結合性アイソザイムであることが明らかになった。
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© 2003 日本植物生理学会
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