抄録
高等植物の伸長生長の分子的なメカニズムには、未だ未解明な部分が多い。ササゲ(Vigna unguiculata)下胚軸を用いた伸長生長メカニズムの生理学的研究から、細胞壁の伸展には力学的パラメーターである壁展性(Φ)と臨界降伏圧(Y)両者の調節が重要であることが明らかになり、in vitroでpH依存的に臨界降伏張力(y)を調節するタンパク質yieldin(Vu-YLD)がクローニングされた。ササゲ以外ではカボチャの下胚軸でのみyの存在が報告されているが、アズキ(Vigna angularis)上胚軸でもササゲと同様の伸長制御様式が考えられる。今回内部灌流型伸展計を用いたアズキ上胚軸のin vitro生理実験より、(i)アズキ上胚軸の伸長域でも力学的パラメーターφとyが存在し、(ii)それぞれpHに依存して変化する。さらに(iii)熱処理によってpHに依存したyの調節が見られなくなるが、(iv)細胞壁タンパクで再構成することによりy調節能が回復することがわかった。しかし(v)ササゲやアズキのYLDタンパク質を用いた再構成実験では、y調節能の回復は完全ではなく、別画分のアズキ細胞壁タンパク質中にy調節能をほぼ完全に回復する活性が確認された。以上よりアズキ上胚軸にはYLD以外にもy調節能を持つ壁タンパク質の存在が示唆された。これらタンパク質について現在解析を行っている。