日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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イネのレトロポゾンp-SINEの発現制御
*大沢 勇久土本 卓津田 賢一山崎 健一大坪 久子大坪 栄一
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p. 283

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抄録
 p-SINE1はイネゲノムに多コピー数存在する大きさ122 bpの散在性反復配列であり、転写産物が逆転写されることによって転移するレトロポゾンSINEであると考えられている。我々はノーザン解析によりイネの培養細胞でp-SINE1が転写されていることを見出した。転写産物の両端を決定したところ、ゲノムにおけるp-SINE1配列の両端と一致していた。また、in vitro転写の結果からp-SINE1内部にRNAポリメラーゼIIIのプロモーターが存在することが示唆された。これらは、p-SINE1がイネ細胞中で内部プロモーターによって転写されていることを示す。転写産物の配列を調べた結果、p-SINE1の中でも最も最近転移したサブファミリー(RA)のメンバー由来のものが大部分を占めていることがわかった。DNAメチル化によるp-SINE1の発現制御を調べるため、細胞をメチル化阻害剤で処理したところ、p-SINE1転写産物の量が顕著に増大した。実際、RAメンバーのゲノム配列は培養細胞で強くメチル化されており、阻害剤処理でそのメチル化が弱まることがわかった。これらの結果はRAメンバーの発現がDNAメチル化によって抑制されていることを示唆する。また植物体では、p-SINE1は穂と根で発現しており、葉では発現していなかった。穂での転写産物の配列は培養細胞と同様、RAメンバー由来のものが大部分であった。これは、RAメンバーの発現が植物体において組織特異的に制御されていることを示唆する。
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© 2003 日本植物生理学会
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