抄録
シロイヌナズナの液胞膜に存在するH+-PPaseの遺伝子AVP1のプロモーター領域には花粉での発現に重要な領域が存在し、これまでの研究により38塩基対内にまでその領域を絞り込んだ(Mitsuda et al., 2001, Plant Mol Biol., 46: 185-192)。その後この領域を釣り餌にして酵母One-Hybrid法により、この領域に結合するタンパク質を2種類同定した。これらはお互いにアミノ酸レベルで45%の相同性を持ち、植物特異的であり、ジンクフィンガーモチーフを1個構成し得る配列とNACドメインに類似したドメインを持っていた。これらは酵母に於いて単独で核に移行して配列特異的にDNAに結合し下流遺伝子の転写を活性化する能力を有することから転写因子であることが強く示唆された。またこれらの結合配列を調べたところ、38塩基対内のGCGTNNNNNNNACGC という15塩基対からなる配列のInverted repeat部位を認識して特異的に結合することがわかった。また、DNA結合能がZnキレーターに対して高い感受性を持つことや、Znフィンガーを構成するであろうシステインおよびヒスチジンに対する点変異タンパクがDNAに結合できないことより、これらはC3HタイプのZnフィンガーDNA結合モチーフを持つことが証明された。しかしZnフィンガーモチーフだけでなくその後に続くNAC類似ドメインもDNAへの結合に必要不可欠であり、全体として全く新しいタイプのDNA結合モチーフを構成していることが示唆された。