日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
日本植物生理学会2003年度年会および第43回シンポジウム講演要旨集
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コムギ(Triticum aestivum L.)由来のフルクタン合成酵素をコードする遺伝子を導入したペレニアルライグラス (Lolium perenne L.) の特性
*久野 裕金澤 章川上 顕吉田 みどり山田 敏彦島本 義也
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p. 301

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抄録
 フルクタンは寒地型イネ科植物など、温帯起源の植物の組織にデンプンに代わって貯蔵されるフルクトースのポリマーである。フルクタンの主な役割の一つとして細胞内浸透圧調整に関与していることが知られており、乾燥や凍結のような環境ストレスに応答する点で重要な物質である。ペレニアルライグラスは牧草としての評価は高いが、他の寒地型イネ科牧草に比べて環境ストレスに弱い。本研究ではペレニアルライグラスの耐凍性を向上させる目的で、コムギ由来のフルクタン合成酵素6-SFT (sucrose-fructan 6-fructosyltransferase)および1-SST (sucrose-sucrose 1-fructosyltransferase)をコードする遺伝子wft1およびwft21)を導入したペレニアルライグラスを作出した。
 導入遺伝子が確認された16個体を供試し、糖類を抽出してHPLC分析を行った結果、wft1が検出された2個体およびwft2が検出された3個体で、対照個体との比較において、有意な差を示すフルクタンの蓄積が見られた。導入個体に関して電気伝導度法で耐凍性の評価を行った結果、フルクタン含有量が高い導入個体では比較的耐凍性が高かった。このことからコムギ由来のフルクタン合成遺伝子の導入によってペレニアルライグラスの耐凍性が向上することが確認された。
1)Kawakami and Yoshida, Biosci, Biotechnol. Biochem. 66, 2297-2305 (2002)
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© 2003 日本植物生理学会
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