抄録
低温ストレス耐性をもつ植物の多くは、低温ストレスに曝されるとポリアミンが増加する(Guy et al. 1986)。しかし、植物の低温ストレス耐性獲得におけるポリアミンの役割は未解明の部分が多い。我々は低温ストレスに応答するディファレンシャルクローンの中に、ポリアミン生合成のキー酵素のひとつ、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラ-ゼ(SAMDC)の部分cDNAを発見した。このSAMDCの部分cDNAをプローブに用い、イネ実生のcDNAライブラリーから2種類の全長SAMDC遺伝子を単離した(Pillai & Akiyama, Information Sciences, 2002, in press)。今回は、単離したOsSAMDC1 (GenBank, YO7766と一致)及びOsSAMDC2 (GenBank, AJ251899と一致)の3'-UTRを遺伝子特異的プローブとして用いて発現解析を行った。その結果、OsSAMDC1 が低温ストレスにのみ応答するのに対し、OsSAMDC2 は低温ストレスの他、塩ストレスや乾燥ストレスに対しても応答することが明らかになった。また、これらの遺伝子特異的プローブを用いたサザンブロット解析によって、イネ「ゆきひかり」のゲノム中には、OsSAMDC1 及びOsSAMDC2 遺伝子がそれぞれ1コピーだけ存在することが判明した。OsSAMDC1 遺伝子を再導入したイネ遺伝子組換え系統のポリアミン量を比較した結果についても合わせて報告する。