抄録
クロダネカボチャから単離したスペルミジン(Spd)合成酵素遺伝子で形質転換したシロイヌナズナは,野生株に比べ,種々の環境ストレスに対して高い耐性を示す(春日部ら,2001).植物のストレス障害の多くには活性酸素が関与していると考えられるので,低温遭遇葉の抗酸化酵素活性を形質転換体と野生株とで比較した.
播種後55日目の土耕苗を低温条件(5/5℃,12時間日長,200 um-2 s-1)に4日間移した.低温遭遇により葉の遊離ポリアミン濃度が高まったが,常に形質転換体のほうが野生株より高濃度であった.また,低温遭遇により葉のFv/Fmが低下しH202濃度が高まったが,形質転換体はそれらの程度が小さかった.低温遭遇により葉のSOD活性が酵素タンパクの増加を伴って増大し,形質転換体はその程度が極めて大きかった.APX活性においても,SODほどではないものの類似の傾向が認められた.形質転換体ではSpd合成酵素阻害剤処理によりSOD活性増大程度が小さくなり,野生株ではSpd処理によりSOD活性増大が僅かながら促進された.なお,MDHARとGRは低温による増大程度が小さかった.これらの結果は,Spdには抗酸化酵素の低温誘導を促進する機能のあることを示唆する.