抄録
葉緑体は植物の特徴である光合成機能を有し、これは葉や茎など限られた器官においてのみ、発達する。この器官特異的な葉緑体構築機構を解明するために、アクティベーションタギング法を適用し、シロイヌナズナのカルスにおいて光合成遺伝子 RBCS が発現するようになった突然変異系統 ces (callus expression of RBCS ) を選抜した。ces101 系統カルスは緑色を呈し,野生系統カルスに対して RBCS の発現が約700倍増加していた。さらに,葉緑体光合成遺伝子の転写を司るσ因子の遺伝子 SIG1 の発現も増大していた。すなわち、 CES101 は、核光合成遺伝子の発現に加えて、葉緑体光合成遺伝子発現までをもその制御下に置くことが示唆される。ces101 系統においては,ゲノム当たり1コピーの T-DNA が,第3染色体上部 P1 クローン MSL1 部位に挿入されていた。その近傍に存在していたreceptor-like kinase 遺伝子とエンハンサー配列とを連結したバイナリーベクターを作製し,親系統カルスに導入した。その結果、ces101 系統カルスと同様に緑化する表現型が現れ、CES101 はreceptor-like kinase 遺伝子と同定された。また、ces102 系統カルスにおいても、活性化された遺伝子の解析を行っているので合わせて報告する。