抄録
私たちはこれまでにシロイヌナズナにおいて、ミトコンドリア分裂過程に関わる遺伝子として、ADL2b (Arabidopsis Dynamin-Like protein 2b) を同定した。シロイヌナズナゲノム中にはこれと相同性の高い遺伝子ADL2aが存在しているが、この遺伝子産物は葉緑体に局在することが報告されていた。そこで今回、私たちはADL2aに関して細胞内局在を再実験した。すると、私たちの結果では、N末端もしくは全長にGFPをつないだ融合たんぱく質は、どちらも葉緑体には局在しなかった。一方、ADL2aの全長のN末端もしくはC末端にGFPを融合したたんぱく質は、主にミトコンドリアの端部や狭窄部に存在することが確認された。このパターンはADL2bの局在と非常に似たものであった。そこで、ADL2aとADL2bそれぞれにGFPとRFPをつなげて観察したところ、これらの局在パターンが実際に同じであることが確認された。さらに、ADL2aのGTPase領域に点変異を導入したドミナントネガティブたんぱく質をタバコ培養細胞BY-2で発現させたところ、変異たんぱく質を入れた細胞において特異的にミトコンドリアの分裂阻害によると思われる伸長化が引き起こされた。以上の結果から、ADL2aもADL2bと同じようにミトコンドリア分裂に関与していると考えられる。