抄録
高等植物のペルオキシソームは、個体の生長に合わせてその機能を転換させるユニークなオルガネラである。近年、酵母や哺乳類など他の生物種のペルオキシソーム研究から、ペルオキシソームの形成維持に関わる因子群(ペルオキシン)が26種同定されているが、その生理機能のほとんどは未だ不明である。これまでに我々は、シロイヌナズナペルオキシン5、7、14がペルオキシソームへのタンパク質輸送に関わることを明らかにしてきた。そして現在、他生物種には観察されない植物ペルオキシソームの機能転換のメカニズムを統合的に理解することを最終目的として、シロイヌナズナペルオキシンを全て網羅し解析を行っている。まず、他生物種のペルオキシンの配列を用いた相同性検索を行ったところ、シロイヌナズナゲノムには15種のペルオキシン遺伝子が存在していることがわかった。本発表ではこれらのシロイヌナズナペルオキシンのうち、他生物種の解析からペルオキシン5、7、14と同様にタンパク質輸送に関わることが示唆されているペルオキシン10、12について、さらに詳細な結合解析を行ったので報告する。また、酵母two-hybrid screeningによりペルオキシン14と相互作用する植物ペルオキシンの検索をしたところ、ペルオキシン14、5と相互作用する新規RING-fingerタンパク質を同定したので、この解析結果についても併せて報告したい。