抄録
シロイヌナズナにおいて花茎伸長欠損変異体として単離されたacaulis5 (acl5)は、その原因遺伝子がスペルミン合成酵素をコードすることが明らかになっている。しかし、スペルミンをはじめとするポリアミンが植物の形態形成にどのような機構で作用しているか明らかになっていない部分が多い。そこで我々は、スペルミンと花茎伸長とをつなぐ因子の探索を目的とし、acl5のサプレッサー変異体を単離してその解析を行った。EMS処理によって得られた5個体のサプレッサー変異体suppressor of acl5 (sac) 51~55の花茎伸長の回復度合いは様々であったが、いずれも優性変異であった。アミノ酸置換のacl5-1変異株では、ACL5遺伝子自身の発現レベルが上昇し、負のフィードバック制御が示唆されていたが、それぞれのsac変異体では、芽生えの時期で既に、ACL5の遺伝子発現がそれぞれその後の花茎伸長の回復度合いに応じて野生型のレベルに回復していることが分かった。ポジショナルクローニングにより、Sac51変異がMSJ1.18遺伝子内の約900塩基対からなる長い5'側非翻訳領域にあることを明らかにした。推定bHLH転写因子をコードすると考えられるこの遺伝子がこの非翻訳領域によってどのように制御されているのかを検討した結果も報告する予定である。