抄録
植物のCuZn-SODには葉緑体型と細胞質型のアイソザイムがあるが、大部分の緑藻にCuZn-SODが無いことから両アイソザイムの起源に興味が持たれている。我々は昨年の本学会でSpirogyraから葉緑体型CuZn-SOD cDNAを藻類として初めてクローニングし、分子系統樹上で両アイソザイムの分岐点近傍に位置することを報告した。今回は遺伝子構造を比較する目的で、Spirogyraからゲノム遺伝子を単離しその構造を解析した。
DNeasy Maxi Kitで調製したゲノムDNAとcDNAの塩基配列より得たプライマーを用いたLong-PCRで1,686 bpのDNA 断片を得た。さらにこの両末端部位の配列を基に、GenomeWalker Kitを用いたPCRで5.5 kbpの5'上流および1.4 kbpの3'下流のDNA断片を得、3,402 bpの葉緑体型CuZn-SOD遺伝子の塩基配列を決定した。Spirogyraの遺伝子には9個のエキソンがあり、8個のエキソンを持つ植物の葉緑体型遺伝子に比べイントロンを一つ余分に持っていたが、その他のエキソン/イントロン構造は植物のものと一致した。余分のイントロンは191 bpで、葉緑体移行シグナル領域の切断部位より9 bp上流に存在し、植物の細胞質型CuZn-SOD遺伝子の5'-UTR内の第1イントロンの位置と完全に一致していた。したがってSpirogyra遺伝子は両アイソザイムの祖先遺伝子に近い構造をしていると考えられる。現在、コケ・シダ植物にもこのイントロンが存在するかを検討している。