抄録
ホウレンソウやタバコなどの高等植物葉緑体に存在するチラコイド膜及びストロマにアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(tAPX, sAPX)は前駆体 mRNA におけるイントロン11および12の選択的スプライシング機構によりそれぞれの成熟型mRNA (sAPX-I, -II, -III, tAPX-I) が生成している。この制御にはイントロン12の下流に存在するシス配列/SREがスプライシングエンハンサーとして機能していることが明らかになった (Yoshimura et al., 2002 J. Biol. Chem., 277, 40623-40632)。そこで、葉緑体型APXの発現が選択的スプライシング機構に依存しないアラビドプシスを用いたin vivoスプライシング解析系により、SREを介したスプライシング制御系の普遍性を検討した。ホウレンソウ葉緑体型APX遺伝子の3'-領域をCaMVプロモーター下流に連結した導入遺伝子をアラビドプシスへ形質転換した。導入遺伝子由来の前駆体mRNAのプロセッシング過程をRT-PCRにより解析した結果、すべての成熟型mRNAの生成が認められた。一方、SREの一部を欠失もしくは変異させた場合、tAPX-I mRNAのみが生成していなかった。以上より、SREを介した選択的スプライシング制御系は他の遺伝子群にも機能することが示唆された。また、データベース解析の結果、アラビドプシスにおいて11種類の遺伝子配列内にSREと非常に相同性の高い領域が認められた。